目次
日本の公共交通機関は、技術の進化とともにその乗車方法も変化してきました。
20世紀半ばには、紙製の切符が主流で、駅員が手動で切符を切るという方式が一般的でした。
その後、1980年代に磁気乗車券が登場し、自動改札機の普及が進みました。このシステムは利便性を大幅に向上させ、駅の運用効率を高める画期的な進化とされました。
さらに2000年代以降、非接触型のICカードが広がり、SuicaやICOCA、PASMOなど、地域を超えた相互利用が可能となりました。この非接触技術は、改札での通過時間を短縮し、利用者の利便性をさらに向上させました。
一方、QRコードに対応しているスマホの普及でQRコードが決済をはじめ生活のいたるところで利用されています。
QRコードは、スマートフォンや紙に印刷されたコードを使用することで、追加の専用カードや高価な機器を必要とせず、簡単に導入可能です。
また磁気乗車券と比較してリサイクルしやすいのが特徴です。
これにより、国内外の観光客や非接触技術に対応していないユーザーへの対応が可能になります。
本記事では、この新しい交通手段の変革について詳しく見ていきます。
スルッとKANSAI協議会は2024年、QRコードを利用した新たな乗車システム「スルッとQRtto」を発表しました。
このプロジェクトは関西地域の鉄道事業者が共同で取り組むもので、従来の磁気券やICカードを補完する形でQRコードを導入する計画です。
スルッとKANSAIがQRコードを導入する背景には、観光客やスマートフォンを利用する新しい世代の乗客への対応があります。
特に、観光地を抱える関西エリアでは、国際的な旅行者が簡単に利用できるシステムの必要性が高まっています。
以前の磁気乗車券では金額をチャージして帰国の際に払い戻しが必要であることなど利便性が課題でした。
このシステムでは、利用者がスマートフォンで購入したQR乗車券を改札機に直接かざすことで、入場が可能となります。
改札機には高性能なQRコードリーダーが搭載され、コードの読み取り精度とスピードが確保されています。
また、事前にオンラインで購入できることも非接触の利便性をさらに高めています。
2024年5月のNHK報道によれば、首都圏で運行する鉄道8社(JR東日本、京成電鉄、京急電鉄、新京成電鉄、西武鉄道、東京モノレール、東武鉄道、北総鉄道)は近距離の乗車券はQRコードに変更していく方針を明らかにしました。
磁気からQRコードへの切り替えは、2026年度末から順次行われるとのことです。
磁気乗車券は長年使用されてきましたが、金属を含むことからリサイクルが難しく、環境負荷が課題でした。
また自動改札の詰まり解消のためのメンテナンスも頻繁に必要でした。
一方、QRコードは汎用性が高く、また、紙の削減という観点からも、環境負荷を軽減する取り組みとして注目されています。
前述の報道によるとシステムは開発中のためイメージとのことですが乗車券にQRコードが印字されているイメージが発表されていました。
複数回の不正利用などを防ぐ仕組みも導入される予定です。
出典: NHK
このように具体的なサービスや今後の方針が各社から続々と発表されています。
電車バスへのQRコードの導入は現在、全国各地で広がりを見せています。
対象: JR 東日本エリアの新幹線・在来線全線
こちらのプレスリリースにあるよにJR東日本ではQRコードの導入を東北を皮切りに2024年下期以降からスタートする予定になっています。
「えきねっと」で乗車券類を予約・購入する際に「QR 乗車」を選択できるようになり、表示された QR コードを自動改札機に直接かざすと、新幹線も在来線もチケットレスでシームレスに乗車できるようになるとのことです。
東武グループ中期経営計画2024~2027の4か年計画の中で「QR乗車券の導入による磁気乗車券の全廃」が含まれているので将来的に磁気乗車券を全廃する方針が見て取れます。
こちらのプレスリリースにあるようにQRコードを含めた実証実験を行っています。
「TAMa-GO E チケットサイト」にて「高尾山きっぷ」が発売されます。スマートフォンに表示された QR コードを京王線・井の頭線の一部の駅に設置した対応自動改札機や、高尾山ケーブルカー・リフトの乗車改札に設置した専用リーダにかざすことで利用できます。
対象: 21駅
こちらのプレスリリースにあるようにQRコードを含めた実証実験を行っています。
2024年度後半に西武鉄道のターミナル駅、観光地周辺を中心に21駅にて開始とのことです。
対象: みなとみらい線 全駅
こちらのプレスリリースにあるようにQRコードを含めた実証実験を行っています。
サイト上にて企画乗車券を事前に購入し、発行されたQRコードをスマートフォンに表示して、改札機に直接かざすことで、利用できる企画乗車券ということです。
対象: JR 東日本エリアの新幹線・在来線全線
前述の通り関西圏では2024 年 6 月 17 日(月)より QR コードを活用したデジタル乗車券「スルッと QRtto(クルット)」のサービスを開始されています。
電車・バスの乗車券や、観光施設も利用できるチケットをスマートフォンで購入し、QR コードで入場できるようになります。
対象: Osaka Metro及び大阪シティバス
e MetroというアプリでOsaka Metro及び大阪シティバスに乗車できる1日乗車券を購入し、表示されたQRコードを解説にかざして利用できます。
こちらのサイトに詳細があります。
こちらのプレスリリースによると熊本県交通5社(九州産交バス株式会社、産交バス株式会社、熊本電気鉄道株式会社、熊本バス株式会社、熊本都市バス株式会社)は熊本電鉄電車の決済手段について、全国交通系 IC カードを停止し、新たにクレジットカード等のタッチ決済導入の方針を固め、熊本県と熊本市に要望を行ったとのことです。
計画の中では新しい改札の端末ではQRコードの読み取り機能が備わっているのでQRコードを利用した乗車券を模索する方針とのことです。
QRコードを公共交通機関で導入するメリットは多岐にわたります。
一方で、QRコード導入にはいくつかの課題も存在します。
QRコードを活用した乗車システムは、単なる交通手段の一部にとどまらず、スマートシティ構想の一環として進化する可能性を秘めています。
このように改札で導入され始めているQRコードですが、以下のような特徴があるので改札でもスムーズな入退場が実現可能です。
QRコードは「Quick Response」に由来しており、読み取りが高速であることが一つの特徴です。
改札機はスムーズである必要がありますがQRコードの読み取りは高速なので問題にならないでしょう。
QRコードにはコードの中に三つの目のような模様が見つかります。それが「切り出しシンボル(ファインダパターン)」というもので「ここにコードがある」という目印になるものです。
このシンボルにより読み取りを正確に行うことができています。
切り出しシンボル(ファインダパターン)についてはこちらの記事をご覧ください。
QRコードには、誤り訂正機能(エラーコレクション機能)が組み込まれています。
この機能により、QRコードの一部が破損したり汚れたりしても、欠損した情報を補完して正確なデータを復元することが可能です。
これにより、紙のチケットやスマートフォン画面の状態に左右されることなく、スムーズな利用が期待できます。
誤り訂正機能についての詳細な解説はこちらをご参照ください。
日本の公共交通機関におけるQRコード導入は、これまでの乗車券システムの課題を解決し、新たな可能性を切り開く取り組みです。スルッとKANSAIのプロジェクトや2026年度末の首都圏な磁気券廃止計画は、交通の利便性と効率性を大幅に向上させる可能性を秘めています。
一方で、設備投資や利用者教育といった課題もありますが、これらを克服することで、持続可能で柔軟な交通インフラの実現が期待されます。
QRコードの手軽さは、未来の公共交通を支える一つの要素になるかもしれません。
読者の方でオリジナルのQRコード作成にご興味をお持ちの方はQR TOOLがおすすめです。
ぜひお気軽にお試しください。
QR WORLD(QRワールド) 編集部