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QRコードは、現在では世界中で利用されており、スマートフォン一つで簡単にアクセスできることから、決済や広告、店舗案内、交通情報に至るまで、私たちの日常生活に欠かせない存在となっています。
けれども、QRコードが「実は日本発祥」であることは、意外と知られていません。
その背景には、1980年代に使用されていたバーコードからの効率化ニーズと、技術的な課題を克服するための日本企業の独自の発想がありました。
本記事では、QRコードがどのように生まれ、なぜ日本から広がっていったのか、その誕生の背景と開発の過程を詳しく見ていきます。
QRコードが日本で誕生したのは1994年、デンソーウェーブ株式会社(当時:株式会社デンソー)によるものでした。
※QRコードの特許がデンソーによって登録されています。
製造・小売・物流業界などでは当時バーコードが使用されていました。
しかしバーコードでは持てる情報量に限界があり、現場ではより多く、より迅速に読み取れるコードが求められていました。
デンソーの開発チームは、これを実現するために「2次元コード」と呼ばれる新しい形のコードを考案し、QRコードとして開発に成功したのです。
このように、QRコードは日本の産業ニーズに応える形で誕生しましたが、従来のバーコードに比べて「多くの情報が保持できること」「高速で読み取り可能なこと」など、技術的な利点が多く、その後急速に世界中で普及していきました。
こうした背景から、QRコードはまさに日本発の革新技術と言えるのです。
QRコードの開発には、当時の日本の自動車産業が直面していた課題が大きく影響しています。
従来のバーコードは一度にわずかな情報しか扱えないため、部品の情報管理には手間がかかり、効率化の妨げになっていました。
この課題を解決するため、デンソーウェーブの開発チームは新しいコードの開発に着手しました。
最初に挑戦したのが、「どれだけ多くの情報を載せられるか」という点です。
従来のバーコードでは一列に情報を並べる「1次元」構造ですが、QRコードは「2次元構造」を採用し、縦横のマトリクスで情報を配置することで、圧倒的に多くのデータを保持できるようにしました。
また、どの方向からスキャンしても高速に読み取れるよう「位置検出パターン(切り出しシンボル・ファインダパターンとも)」を3つ設置する工夫が加えられたのも大きな技術的進化でした。
こうした技術的課題をクリアするための試行錯誤の過程で、開発チームは何度もプロトタイプを作り直し、試行錯誤を重ねながらQRコードを完成させました。
この開発プロセスには、コードの美しさやスキャン時の確実性など、細かな調整が必要であったといいます。
QRコードは、失敗や試行錯誤の積み重ねから生まれました。
開発チームは、読み取り速度の向上やエラー耐性を高めるために、様々な工夫を試みました。
たとえば、一部が汚れても読み取れる「誤り訂正機能」が実装されました。
また、読み取りの速さを追求した結果、スキャンの向きに左右されない構造が必要であることも発見され、これが最終的なQRコードの形状を決定づけました。
これらの課題をクリアしたQRコードは、自動車部品の管理だけでなく、他の産業にも応用が可能な技術として注目されるようになりました。
こうして、日本発の技術が、世界に通用する普遍的な革新技術へと進化していきました。
QRコードは、まずは自動車業界での部品管理に活用され、業務効率化に大きな貢献を果たしました。
日本国内では、銀行や公共交通、さらには携帯電話業界でも徐々に採用されていき、2000年代にはコンビニエンスストアでの決済や電子チケットなど、日常生活にも取り入れられるようになりました。
この普及の背景には、日本が技術革新を積極的に推進していたことが挙げられます。
また、QRコードが特許権を持ちながらも無料で公開されていることも、普及を後押しした要因です。
日本国内でQRコードが広がることで、一般消費者にもその利便性が認知されるようになり、生活の中に根付いていきました。
日本で生まれたQRコードは、次第に世界へと広がっていきました。
特に、中国ではモバイル決済が急速に普及したことで、QRコードは欠かせない技術となりました。
中国ではスマートフォンが普及する中で、QRコードを使った決済システムが急成長し、AlipayやWeChat Payなどの大手決済サービスが登場。
こうしたサービスは、キャッシュレス社会を実現し、QRコードの国際的な地位をさらに高める結果となりました。
また、他のアジア諸国や欧米でも、QRコードが導入され、キャッシュレス社会のインフラを支える重要な要素となっています。
こうして、日本発の技術が世界の様々なシーンで活躍するまでに成長しました。
QRコードは現在、さらに新しい技術と結びつき、進化を続けています。
たとえば、デザイン性を強調したコード、さらには動画やAR(拡張現実)と連携するなど、新たな応用が模索されています。
【QRコードのカスタマイズをする場合はQR TOOLがおすすめ】
特に、COVID-19の流行により、非接触での情報提供が求められる場面が増えたことから、QRコードの需要は一層拡大しています。
また、次世代のセキュリティ対策が施されたQRコードも開発されつつあり、将来的にはIoT(モノのインターネット)やスマートシティなどとの連携も期待されています。
QRコードは、日本が生んだ画期的な技術であり、デジタル社会を支えるインフラとして今や世界中で活用されています。
その誕生から現在までの歩みを振り返ると、開発者の努力とオープンイノベーションを重視した結果グローバルなインパクトを持ったことが分かります。
QRコードは、これからも進化を続け、アナログとデジタルを繋ぐ新しい価値を社会に提供していくでしょう。
QR WORLD(QRワールド) 編集部